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本記事は、SaaS管理プラットフォーム「マネーフォワード Admina」を提供するマネーフォワードが、100名規模以上の企業において情報システム業務を担う担当者やITマネージャーを主な対象として作成しています。
企業のDX推進に伴い、業務で利用されるクラウドサービスは急増していますが、導入の容易さゆえに管理が煩雑になり、利用実態のないSaaSライセンスへの支払いや、退職者のアカウント残存といった課題を抱える企業は少なくありません。さらに2026年を見据えた最新動向として、従業員が未承認のAIを利用する「シャドーAI」の問題や、個人情報保護法改正によるコンプライアンスリスクも深刻化しています。本記事では、情シス部門が実施すべき「SaaSアカウントの棚卸し」の具体的な進め方と、SaaS管理ツールの費用相場、コスト削減・セキュリティ向上を両立させる管理のポイントを網羅的に解説します。

SaaS棚卸しとは
本記事のポイント
SaaS棚卸しは単なるコスト削減ではなく、法改正対応やシャドーAI対策に不可欠な経営課題です。
100名規模の企業では、SaaS棚卸しによって年間120〜360万円の無駄なライセンス費用を削減できます。
手動のExcel管理には限界があり、中規模以上の企業ではSaaS管理プラットフォームの導入が投資対効果を高めます。
SaaS棚卸しとは、社内で契約・利用されているすべてのSaaS(クラウドサービス)を可視化し、アカウント数、利用状況、契約金額、管理権限を網羅的に照合・整理する業務プロセスです。
IT資産管理の一環として、台帳上の情報と実際の利用環境を一致させ、IT投資の最適化とガバナンスの強化を図ることを目的としています。
SaaSの棚卸しと物理的な実地棚卸しの違い
PCやサーバー等のハードウェアを対象に行う物理的な確認作業である「実地棚卸」とは異なり、SaaSの棚卸しにおいては物理的な機器が存在しません。そのため、クレジットカードの決済データや請求書、SSO(シングルサインオン)のログインログ、各SaaS管理画面のユーザーリストといった「論理的なデータ」を突合するアプローチをとります。
SaaS棚卸しが今求められる背景
近年、SaaSの導入が加速した結果、ライセンスの重複や未利用アカウントの放置が目立ち始め、ITコストの肥大化と新たなコンプライアンスリスクが経営課題となっています。
従来のオンプレミス型ソフトとは異なり、SaaSは部門単位で容易に導入できるため、全社的な利用実態を情シスが把握しきれないケースが増えています。特に2025年以降は、以下の2つの深刻な背景が存在します。
2025年個人情報保護法改正と「クラウド例外」見直し
日本の実務においてSaaS管理に大きなインパクトを与えるのが、2025年の個人情報保護法改正に向けた議論です。これまで、SaaS事業者がサーバー上の個人データにアクセスしない仕様の場合、委託元企業の監督義務が緩和される「クラウド例外」という解釈がありました。しかし、改正議論ではこの枠組みが見直され、SaaS利用企業に対しても委託先の取扱状況把握や安全管理措置の確認が厳格に求められる方向となっています。どのSaaSに個人情報が保存されているか、SaaSライセンスが適切に管理されているかを把握する棚卸しは、法的義務への対応として必須となっています。
「シャドーAI」の台頭と深刻な情報漏洩リスク
2025年から2026年にかけて急増しているのが、従業員が未承認の生成AIサービスを業務で利用する「シャドーAI」です。Cyberhaven社の2026年版レポートによれば、AIツールへのデータ入力の約39.7%に機密情報が含まれており、従業員は平均して3日に1回の頻度で機密データをAIに入力しています。未許可のSaaSやAIツールにどのような情報が流出しているかを可視化し、リスクを遮断するためにも、高度なSaaSアカウント棚卸しが急務です。
SaaS棚卸しを行うべき3つの主要な理由
SaaS棚卸しを適切に実施することで、コスト削減、セキュリティリスクの低減、そして内部統制の強化という3つの大きなメリットが得られます。
1. ライセンス費用の最適化
利用実態のないアカウントを解約することで、無駄なサブスクリプション費用を直接的に削減できます。
SaaS管理のグローバルリーダーであるZylo社の「2025 SaaS Management Index」によると、企業が契約しているSaaSライセンスの53%が過去30日間で一度も利用されていないという結果が出ています。また、Gartner等の調査でも、企業のSaaS支出の約30%が未活用や重複ツールに浪費されていると推計されています(※Gartner社の各種レポートより。数値は調査時期・対象企業により異なります)。一般的に、100名規模の企業でSaaS棚卸しを実施した場合、不要なSaaSライセンスの回収や重複プランの統合により、月額10〜30万円(年間120〜360万円)のコスト削減効果が見込めます(※複数のSaaS管理ベンダーの公開事例・ガイドラインに基づく目安値です)。
2. セキュリティレベルの向上
退職者のアカウント削除漏れを特定し、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクを最小限に抑えます。
クラウド人事労務ソフトのSmartHRが2025年に実施した調査では、実に63.9%の企業が「退職者や異動者のSaaSアカウントを適切に管理できていない」と回答しています。退職者のいわゆる「ゾンビID」が放置されていると、悪意の有無に関わらず元従業員が社内機密データにアクセス可能な状態が継続します。名簿とアカウントリストを厳密に照合する棚卸しは、企業を守る防波堤となります。
3. コンプライアンスと内部統制の遵守
どのサービスにどのようなデータが保存されているかを把握し、法令遵守(コンプライアンス)の体制を整えることができます。
個人情報保護法や各種業界ガイドラインに基づき、適切なデータ管理が求められる中、「どのSaaSに個人情報が含まれているか」を把握していない状態は重大なリスクです。棚卸しにより、データの保管場所と管理責任者を明確にすることは、健全な経営体制の証明に繋がります。
実践!SaaS棚卸しを進める5つのステップ
SaaS棚卸しは、「全件リストアップ」「情報の集約」「実態の精査」「是正」「運用化」という順序で進めることで、漏れなく効率的に実施できます。
STEP 1:社内SaaSの全件リストアップ
まずは、社内で利用されている可能性のあるサービスをすべて洗い出します。経理データ(法人カードの決済履歴や請求書)との照合、SSO(シングルサインオン)の連携ログの確認、各部署の現場担当者へのヒアリングを組み合わせることで、漏れのないリストを作成します。
STEP 2:SaaS管理台帳の作成と情報の集約
洗い出した情報を一元管理できる状態にします。Excelやスプレッドシート、または専用ツールを用いて、以下の「SaaS棚卸し管理項目チェックリスト」を満たす台帳を構築してください。
管理項目 | 必須 / 推奨 | 記載内容の例 |
|---|---|---|
サービス名・プラン | 必須 | Zoom(Pro版)、Slack(Enterprise版) |
契約者・管理部門 | 必須 | 営業部(鈴木)、情シス部門(佐藤) |
アカウント数・費用 | 必須 | 100ライセンス、月額200,000円 |
契約更新日・支払方法 | 推奨 | 2026年12月31日、クレカ決済 |
個人情報の有無 | 推奨 | あり(顧客名簿を保存)、なし |
STEP 3:アカウント利用状況の確認と照合
各SaaSの管理画面からエクスポートした「最終ログイン日時」等のユーザーデータを、人事データベース(従業員名簿)と突合します。「すでに退職しているユーザー」「過去90日以上ログインがないユーザー」「重複登録されているユーザー」を正確に抽出します。
STEP 4:不要なライセンスの削減と契約変更
抽出された不要なアカウントを削除し、契約ライセンス数を適正な数へと削減します。類似する複数のSaaSが存在する場合は、全社標準ツールとして一方に集約し、ボリュームディスカウントの適用を狙うことも有効です。
STEP 5:継続的な棚卸しルールの策定
棚卸しを一度きりのイベントにせず、四半期に一度などの定期的なルーチン業務に組み込みます。また、新規SaaS導入時の申請・承認フローを整備することで、スプロール(無秩序な乱立)を未然に防ぐ体制を構築します。
▲ SaaS棚卸しを漏れなく効率的に進める5つのステップ
SaaS管理を効率化する手法の比較:Excel管理 vs 専用ツール
管理対象が20個以上、または従業員が50名〜100名を超える段階では手動管理の限界が来るため、専用のSaaS管理ツールの導入が推奨されます。
自社のフェーズや規模に合わせて、最適な管理手法を選択しましょう。
比較項目 | 手動管理(Excel/スプレッドシート) | SaaS管理ツール(SMP) |
|---|---|---|
初期費用・年間費用の目安 | 0円 | 初期数万円〜 / 年間数十万〜数百万円(規模による) |
データ更新・自動化 | 手動(更新が滞り陳腐化しやすい) | API連携により自動・リアルタイムで可視化 |
シャドーIT / AI検知 | 自己申告に依存するため検知不可 | ブラウザ拡張や連携により自動検知可能 |
対象企業フェーズ | 50名未満のスタートアップ、小規模企業 | 100名以上の成長企業、中堅〜大企業 |
成長中のスタートアップが最初に導入すべきSaaS管理ツールの選び方
従業員数が急増している成長フェーズのスタートアップでは、入退社に伴うアカウント発行・削除の工数が爆発的に増加します。この段階で最初に導入すべきSaaS管理ツールのおすすめは、「アカウントのプロビジョニング(自動発行・削除)機能」と「シャドーIT検知機能」に強みを持つ製品です。単純な可視化だけでなく、情シスの実務工数を直接的に削減できるツールを選ぶことがROI(投資対効果)を最大化する鍵となります。SaaS管理ツールの費用については、数十名規模であれば月額数万円程度からスモールスタートできるプランを提供するベンダーも存在します。
▲ 自社のフェーズに合わせたSaaS管理手法の比較(Excel管理 vs 専用ツール)
実際の導入事例・成功事例
専用のSaaS管理ツールを導入し、アカウント一元管理と大幅なコスト削減に成功した国内企業の事例を紹介します。
株式会社日本旅行の事例:2,000万円のコスト削減
業種・規模: 旅行業 / 従業員数数千名規模
課題: グループ全体で約6,600ものSaaSアカウントを利用していましたが、手作業や紙の台帳で管理しており、シャドーITのリスクも高まっていました。
施策と成果: SaaS管理プラットフォームを導入しアカウント情報を一元化。「誰が・いつログインしているか」を可視化し、ブラウザログから未許可SaaSの利用を徹底検知しました。不要なライセンス解約と重複契約の整理により、実質約2,000万円の管理費用(SaaSコスト)削減という成果を上げました(※当該事例はITboard等のSaaS管理プラットフォーム導入による成果として報告されています。詳細はITboard公式サイト等の各社の公式情報をご確認ください)。
新日本プロレスリング株式会社の事例:3名体制でのガバナンス強化
業種・規模: エンターテインメント / グループ連携
課題: SaaS導入を積極的に進める一方で、システム担当者はわずか3名という少人数体制であり、アカウント管理シートの保守や契約更新業務にリソースが圧迫されていました。
施策と成果: 「マネーフォワード Admina」を導入し、従業員情報を軸としたアカウント管理と更新業務を自動化。わずか3名の情シス体制で、親会社を含めたグループ連携を支える強固なITガバナンスを構築しました。
株式会社ヘンリーの事例:急成長企業におけるUI統一
業種・規模: 医療系ITスタートアップ / 従業員数急増中
課題: 社員数の急増に比例して利用SaaS数が増大し、各SaaSの管理画面がバラバラなため入退社時のアカウント発行・削除に多大な時間を要していました。
施策と成果: SaaS管理ツールを導入し、単一のUIからすべてのSaaS利用状況を一元管理。退職者のアカウント残存リスクを排除し、アカウントのライフサイクル管理を劇的に効率化しました。
SaaS棚卸しのよくある失敗パターンと対策
SaaS棚卸しを計画なしに進めると、現場の反発や業務停止を招くリスクがあります。よくある失敗とその回避策を解説します。
1. 予告なしのアカウント停止による業務の混乱
情シスが「90日間ログインがない」というデータだけを根拠に、現場への事前通告なしにアカウントを強制停止してしまうケースです。実際には「年次決算でのみ使用するツール」や「外部パートナーとの緊急用連絡ツール」である可能性があり、業務に深刻な影響を与えます。必ず「オプトアウト方式(期日までに継続希望の連絡がなければ削除する旨を事前通知)」を採用してください。なお、このフローの詳細については後掲の図解も参照してください。
2. アンケート調査による現場の負担と低い回収率
現場部門に「利用しているすべてのSaaSをリストアップして提出してほしい」と依頼しても、多忙な業務の中では後回しにされ、正確なデータは集まりません。情シス側で事前に経理データやSSOログから利用実態を7〜8割方特定し、「このリストに相違がないか確認してほしい」という形式で依頼することが重要です。
3. M&A・組織再編(PMI)時の統合見逃し
企業買収やグループ再編(PMI)の際、買収元と買収先が個別に契約していたSaaSの「合流」が発生します。これを棚卸しせずに放置すると、同じツールの重複契約や、セキュリティ基準を満たさないシステムの利用が継続します。PMIの初期段階でITインフラの棚卸しプロジェクトを組成することが不可欠です。
▲ 現場の業務停止リスクを回避する「オプトアウト方式」のアカウント停止フロー
よくある質問(FAQ)
SaaS棚卸しや管理ツールに関して、実務担当者からよく寄せられる疑問に回答します。
Q:SaaS管理ツールの初期・年間費用の相場は?
A:SaaS管理ツールの費用は、対象となる従業員数や連携するSaaSの数により変動します。一般的に、50〜100名規模であれば月額数万円〜10万円程度(年間数十万円〜100万円超)が相場ですが、不要なライセンスの削減効果(年間120〜360万円の削減等)により、多くの場合1年以内に投資額を回収可能です。
Q:一般的な実地棚卸しとSaaSの棚卸しの違いは?
A:PCなどを対象とする物理的な実地棚卸とは異なり、SaaSは実体を持たないため、ログイン履歴、決済データ、SSOのアクセスログといった「論理的データの突合」によって利用実態を特定する点が最大の違いです。
Q:IT資産管理の一環としてSaaS契約とライセンスを管理できるクラウドサービスには、どのようなものがありますか?
A:IT資産管理(ITAM)ツールの一部としてSaaS管理機能を提供するものや、SaaS管理に特化したSMP(SaaS Management Platform)が存在します。代表的なクラウドサービスとして「マネーフォワード Admina」などが挙げられ、API連携による自動取得に強みを持ちます。
SaaS棚卸しを効率化するなら「マネーフォワード Admina」
手動での棚卸しやアカウント管理に限界を感じている、未使用ライセンスの特定に時間がかかりすぎる、退職者アカウントの削除漏れが不安——こうしたSaaS管理の課題や日々の運用工数にお悩みなら、SaaS管理プラットフォームの活用がおすすめです。 SaaS管理プラットフォーム「マネーフォワード Admina」は、連携するだけでSaaSの利用状況を可視化し、管理業務を効率化します。
■豊富な連携と管理の自動化で工数削減
連携数No.1水準のSaaSと連携し、誰が何を使っているかを即座に可視化します。さらに入退社に伴うアカウント発行・削除も自動化できるため、手作業によるミスをなくし、情シスの業務時間を大幅に削減します。
■継続的なコスト最適化を実現
未利用アカウントや重複契約の把握、利用率の分析により、無駄な支出を継続的に抑制できます。契約更新の見直し機会も逃しにくくなります。
■セキュリティを堅実に強化
退職者のアカウント削除漏れやシャドーIT、外部公開ファイル検出機能により、セキュリティインシデントのリスクを着実に低減します。SOC2 Type2報告書も取得しており、安心してご利用いただけます。
まずは14日間の無料トライアルで、Adminaの効果をご体感ください。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。
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まとめ
SaaS棚卸しは、一度実施して終わりではなく、継続して取り組むことで実際の効果が出てきます。可視化されたデータに基づき無駄を排除し、必要なツールに必要なだけ投資するサイクルを回すことで、情シス部門の負担軽減とコスト最適化の両立が見えてきます。まずは、自社が契約しているSaaSの中から「最もライセンス費用が高いツール」を1つ選び、その管理画面から「過去90日間ログインしていないユーザー数」を確認してみてください。そこに見つかった数字が、棚卸しを始める最初の一歩になるはずです。
✅ 最もコストが高いSaaSの未稼働アカウント数を管理画面で確認する
✅ 経理データ(法人カード明細)からSaaS支払いを一覧化する
✅ 各部署の担当者に利用中のSaaSをヒアリングする




