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※本記事は、人事・労務および情報システム領域の実務知識をもとに作成しています。制度設計や法令対応については、各企業の状況に応じて専門家(社会保険労務士・情報セキュリティ専門家等)へのご相談を推奨します。
【監修・執筆について】本記事は、人事・労務および情報セキュリティの実務経験を持つ編集部が調査・執筆し、社会保険労務士・情報セキュリティ専門家の知見に基づき内容を確認しています。
本記事は、自社の働き方や制度設計を見直そうとしている人事部門および情報システム(情シス)部門の担当者を対象としています。パンデミックを経て一気に普及したテレワーク・リモートワークですが、2025年現在、制度の在り方や働き方のトレンドは大きな転換点を迎えています。「完全フルリモートの継続」と「オフィスへの出社回帰」で企業のスタンスが二極化する中、自社にとって最適な働き方を見つけることが急務です。本記事では、「テレワークとリモートワークの違い」という基礎知識から、最新の市場動向、国内企業の成功事例、そして導入時に直面するハードルと解決策までを網羅的に解説します。

テレワーク・リモートワーク・在宅勤務の違いと定義
本記事のポイント
テレワークは厚労省などが使う「行政用語」である。
リモートワークはIT業界などで好まれる「モダンな働き方を指す用語」である。
在宅勤務は働く場所を「自宅のみ」に限定した言葉である。
両者に法的な違いはないが、対象や文脈によって使い分けることが推奨される。
テレワークとリモートワークに法的な意味の違いはありませんが、使われる文脈やターゲット層が異なります。
テレワークとは(行政用語としての定義)
テレワーク(Telework)は、「tele(離れた)」と「work(働く)」を組み合わせた造語であり、厚生労働省や総務省などの行政機関が一貫して使用している公式な用語です。国や自治体のガイドライン、助成金の申請、就業規則など、公的な文書においては基本的に「テレワーク」という名称が使われます。情報通信技術(ICT)を活用し、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を指す厳密な概念です。
リモートワークとは(IT/スタートアップでの定義)
リモートワーク(Remote work)は、主にIT業界やスタートアップ企業、あるいは一般の求職者や英語圏で好んで使われる言葉です。厳密な定義はありませんが、「リモートワーク」という言葉は「自由でモダンな働き方」というイメージを喚起しやすく、求人市場においても「リモートワーク 求人」の方が検索ボリュームが多くなる傾向があります。自社の採用ブランディングに合わせてこの言葉を使用する企業も多数存在します。
在宅勤務との違い
在宅勤務は、テレワークやリモートワークの一形態であり、働く場所を「従業員の自宅」に限定する働き方です。テレワークには、自宅以外で働く「サテライトオフィス勤務」や、移動中に働く「モバイルワーク」も含まれます。そのため、在宅勤務はテレワークよりも場所の制約が厳しい限定的な言葉として位置づけられます。
3つの用語の比較表
用語 | 主な使用文脈 | 働く場所 | ニュアンス・イメージ |
|---|---|---|---|
テレワーク | 行政機関、公的文書、助成金申請 | 自宅、サテライトオフィス、カフェなど | 公的で厳格、ICTを活用した柔軟な働き方 |
リモートワーク | IT業界、スタートアップ、求人票 | 自宅、遠隔地など制限なし | 自由度が高くモダンな働き方 |
在宅勤務 | 社内規定、雇用契約書 | 自宅のみ | 場所が自宅に限定される |
▲ テレワーク・リモートワーク・在宅勤務の定義と文脈の違い
2025年の最新動向:出社回帰かハイブリッドか
本記事のポイント
巨大IT企業を中心に「週5日原則出社」への回帰が始まっている。
日本の多くの企業は「週1〜3日出社」のハイブリッドワークに落ち着いている。
厚労省のガイドライン改訂により、労働時間管理とメンタルヘルス対策の重要性が増している。
2025年現在、極端なフルリモートは減少し、「ハイブリッドワークの定着」と一部の「原則出社への回帰」という二極化が進行しています。
大手IT企業を中心に広がる「出社回帰」の動き
2024年から2025年にかけての最大の世界的なトレンドは、パンデミック時に推進されたフルリモートワークから「出社回帰(Return to Office)」への揺り戻しです。例えば、Amazonは2025年1月より「週5日フル出社」を原則とする方針を打ち出し、AWSジャパンやHonda(本田技研工業)なども対面コミュニケーションや企業文化の継承を重視し、原則出社へと舵を切りました(Amazon公式発表および報道各社の記事による)。イノベーションを誘発する「偶発的なコミュニケーションの喪失」が懸念されたことが大きな理由です。
日本企業におけるハイブリッドワークの定着
一方で、日本国内の多くの企業は完全な出社回帰ではなく「ハイブリッドワーク」を着地点としています。フルリモートを推奨していたLINEヤフー(2025年4月より部門に応じて週1〜3日出社)やメルカリ(週2日出社推奨)などの大手IT企業も、オフィス出社を基本ポリシーとして明記するに至りました(各社公式発表による)。国土交通省の「令和6年度テレワーク人口実態調査」によると、雇用型就業者におけるテレワーク実施率は24.6%であり(出典:国土交通省 令和6年度テレワーク人口実態調査)、週に数回はオフィスで顔を合わせ、集中作業は自宅で行うというバランス型の働き方が標準化しています。
労働法制のアップデートと厚労省ガイドライン
働き方の多様化に伴い、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(令和3年3月改訂版、出典:厚生労働省公式サイト)では、パソコンのログオン・ログオフ記録を用いた「客観的な労働時間の適正把握」が原則化されました。また、自宅の作業環境チェックリストの活用や、孤立感によるストレスを防ぐためのメンタルヘルス対策も事業者に対して強く推奨されています。
テレワーク導入による具体的な成功事例とコスト削減効果
本記事のポイント
アウンコンサルティングはオフィス廃止により月額340万円の賃料を削減した。
BPOテクノロジーは地方在住者をフルリモート雇用し、高い定着率を実現した。
経営戦略としてのテレワークは、財務構造改善と採用力強化に直結する。
戦略的なリモートワークの導入は、オフィスコストの大幅削減や地方人材の獲得といった明確な定量効果をもたらします。
アウンコンサルティング株式会社の事例(コスト大幅削減)
総務省の「テレワークトップランナー2025」で総務大臣賞を受賞したアウンコンサルティング株式会社は(出典:総務省テレワークトップランナー事例集)、完全テレワークへの移行に伴い固定オフィスを廃止しました。シェアオフィスへ移行した結果、2019年に月額340万円かかっていたオフィスコストを、2024年には月額11万円にまで劇的に削減することに成功しています。さらに勤務地を全国に拡大したことで採用力が飛躍的に高まり、採用単価は30,000円から5,000円へと大幅に低下しました。
BPOテクノロジー株式会社の事例(地方雇用創出)
オンラインアシスタントサービスを運営するBPOテクノロジー株式会社は、創業当初からフルリモートを前提とした体制を構築しています。常時雇用者の約75%、および役員・管理職の約71%が1都3県以外の地域に在住しており(出典:総務省テレワークトップランナー事例集)、地方や離島からも優秀な人材を確保しています。居住地に関わらず平等に評価される制度を整えることで、地方創生に貢献するだけでなく、人材の離職防止にも成功しています。
テレワーク・リモートワーク導入における失敗パターンと課題
本記事のポイント
経営層の目的が曖昧だと、現場に混乱と不満を招きやすい。
プロセスや態度に依存した日本型評価制度はリモートワークと相性が悪い。
過剰な監視(マイクロマネジメント)は従業員の自律性とエンゲージメントを奪う。
リモート導入における最大のハードルはITインフラの不足ではなく、マイクロマネジメントや従来の評価制度の不適合にあります。
経営層の目的の曖昧さとマイクロマネジメント
「他社がやっているから」といった曖昧な理由で導入すると、制度設計が追いつかずに失敗します。とくにリモートの課題として顕著なのが、部下を信じられずに行うマイクロマネジメントです。常にウェブカメラをオンにさせたり、PCの操作ログで離席時間を分単位で監視したりする過剰な管理は、従業員のストレスを増大させ、深刻なエンゲージメントの低下を引き起こします。
プロセス評価への依存とエンゲージメント低下
日系企業にありがちな「遅くまで残業しているか」「上司の目の届く範囲で頑張っているか」といったプロセス評価(態度評価)は、テレワーク下では機能しません。成果物よりも「見えているか」で評価を下してしまうと、正当な評価が得られないと感じた優秀な従業員から離職していくという結果を招きます。
コミュニケーションの希薄化と「ずるい」という誤解
テキストベースのやり取りばかりになると、アイデア創出のための雑談や暗黙知の共有が困難になります。また、製造現場など出社が必須の部署とテレワークが可能な部署の間で分断が生じ、「通勤しないテレワーカーはずるい」という不公平感が社内に蔓延し、組織の雰囲気が悪化するケースも少なくありません。
▲ テレワーク導入が失敗に陥る悪循環プロセス
テレワーク導入のハードルを越える解決策
本記事のポイント
プロセスではなく「成果」で評価するジョブ型評価・MBOへの移行が必須である。
意図的な雑談の機会を設計し、組織のサイロ化を防ぐ。
ゼロトラストアーキテクチャによる最新のセキュリティ基盤を導入する。
人事評価制度のアップデートと意図的なコミュニケーション設計、および最新のセキュリティ基盤の導入が成功の鍵です。
ジョブ型評価やMBOの導入
リモートワークを成功させるためには、マネジメントのパラダイムシフトが必要です。時間やプロセスではなく「成果(アウトプット)」で評価するジョブ型評価や、MBO(目標管理制度)へ移行しましょう。労働者の働きを適切に評価するための明確なKPIを設定することで、過剰な監視を行わずとも自律的な業務遂行が可能になります。
意図的なコミュニケーションの設計とツールの活用
自然発生的な雑談が失われるため、意図的にインフォーマルなコミュニケーションの場を設計する必要があります。例えば、チャットツールなどを活用してテキストベースの業務連絡を効率化する一方で、ビデオ会議での1on1やバーチャルオフィスツールを併用し、リアルタイムでチームとコミュニケーションを取れる環境を整備することが重要です。また、出社必須の従業員には特別手当を支給するなど、不公平感をなくす待遇のバランス調整も求められます。
ゼロトラストアーキテクチャによるセキュリティ対策
社外からのアクセスが増加することで、従来の境界型防御(社内ネットワークは安全とする考え方)は限界を迎えています。テレワーク環境では、あらゆるアクセスを疑い認証・認可を行う「ゼロトラストアーキテクチャ」への移行が急務です。VPNのボトルネックを解消し、クラウドベースのセキュアなアクセス環境を構築することで、どこからでも安全に業務が行えるようになります。
▲ テレワーク導入のハードルを越える3つの解決策
よくある質問
Q:テレワークで自宅以外を禁止するのはなぜですか?
A:主な理由は情報漏洩の防止とセキュリティの確保です。カフェの公共Wi-Fiを利用したことによる通信の傍受や、背後からのぞき見される(ショルダーハッキング)リスクを排除するため、多くの企業が働く場所をセキュアな自宅のみに制限しています。
Q:リモートワークで直面する主な課題は何ですか?
A:労働時間の正確な把握が難しくなること、雑談の減少によるコミュニケーション不足、そしてプロセス評価が機能しなくなることによる人事評価の難航が挙げられます。これらは、クラウド勤怠管理ツールの導入やMBO(目標管理制度)への移行で解決が可能です。
Q:テレワークとリモートワークの言葉の違いを簡単に言うと?
A:本質的な働き方に違いはありませんが、助成金申請や就業規則などの公式な場では行政用語である「テレワーク」が使われます。一方、IT業界や求人募集では、自由な働き方を強調する「リモートワーク」という言葉が好まれて使われる傾向があります。
Q:従業員が在宅勤務で疲れるのはなぜですか?
A:仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、過重労働や長時間労働に陥りやすいことが大きな要因です。また、長時間の座り仕事による運動不足や、同僚との対面会話が減ることによる孤独感が、メンタルヘルスの不調につながるケースもあります。
まとめ
本記事では、テレワークとリモートワークの言葉の違いから、2025年におけるハイブリッドワークの普及、実在企業のコスト削減事例、そして導入時の課題と解決策までを解説しました。リモート環境での働き方を定着させるには、ITツールの導入だけでなく、成果に基づく評価制度への移行やセキュリティ基盤の見直しが不可欠です。まずは自社の現状の働き方や評価制度に課題がないか、客観的な見直しを行うところから取り組んでみましょう。
✅ ネクストアクション:今日からできる3つのチェック
✅ 自社の評価制度がプロセス評価に依存していないか見直す
✅ ゼロトラストアーキテクチャの導入・移行状況を情シスチームで確認する
✅ テレワーク対象外の部署との不公平感を解消する待遇調整策を検討する
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
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